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花係り
教室後ろの棚の上には、いつも綺麗な花が飾られている。
花は数日で入れ替えられるが、係りがある訳ではないから、誰かが善意で花を活けているのだろう。でも、誰が?
気になると、花を活けているのが誰なのかどうしても知りたくなり、常に花瓶を気にするようになった。だけど見ている限り花瓶に近づく者はいない。
登校してからHRが始まるまで、休み時間、放課後。ずっと花瓶に意識を向けていたら、ある時、やっと花を変えている人物が判明した。
花を変えていたのは、クラスでもかなり地味な目立たない女子だった。
普通に見張っていても埒が明かないから、早起きをして登校した日、彼女は誰もいない教室に新しい花を活けたばかりの花瓶を置いていた。
その時の表情がなんとも幸せそうで、物陰から目を奪われた。
あれ以来、俺の視線は気づくと彼女を追いかけている。
花の世話をしている以外で、あの日みたいな顔はしないのかな。
クラスメイトなんだ。声をかければいい。どうしてあんな早朝から花を替えているのか聞いてみたらいい。
だけどどうしてかそれができなくて、今俺は、花瓶ではなく、ただじっと自主的花係りの彼女を見つめる毎日を送っている。
花係り…完
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