平和の虹

1/11
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

平和の虹

千歳に飛行機が滑るように降りて、 滑走路を移動しているとき、 これは「来た」ということなのか、「帰った」ということなのか、 一瞬考えるようになった。 羽田から来ると、千歳の風景は少し心細い。 羽田はガチャガチャしていて、浮かれた感じがするせいだ。 飛行機から出ると、頬にひんやりとした空気が吸い付いてくる。 東京とは違う、清涼感が凝縮された冷気。 到着口に向かう間、濃い空気に包まれて、私はリズミカルに歩く。 ザクザクと、一歩ずつ、何かを取り戻しながら。 取り戻すものの正体を私は知っている。 「私は札幌の子なのだ」という意識だ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!