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平和の虹
千歳に飛行機が滑るように降りて、
滑走路を移動しているとき、
これは「来た」ということなのか、「帰った」ということなのか、
一瞬考えるようになった。
羽田から来ると、千歳の風景は少し心細い。
羽田はガチャガチャしていて、浮かれた感じがするせいだ。
飛行機から出ると、頬にひんやりとした空気が吸い付いてくる。
東京とは違う、清涼感が凝縮された冷気。
到着口に向かう間、濃い空気に包まれて、私はリズミカルに歩く。
ザクザクと、一歩ずつ、何かを取り戻しながら。
取り戻すものの正体を私は知っている。
「私は札幌の子なのだ」という意識だ。
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