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今頃、このクラスの中の何人かは本部クラスに行ってて、
定期公演のレッスンをしているんだ。
誰かのヒソヒソ声がする。
「やっぱりさ、いくら上手でもさ、おうちがね」
「ホントはさ、クララになれたんだよね」
「でも、クララやるコはさ、チケット100枚売らなくちゃいけないんだよ」
「うそ、100枚も?」
「特別に振りつけ料も払わなくちゃならないからさ」
「やっぱり、ちゃんとしたおうちのコじゃないとね」
「ネズミにだって、なれないんだよね」
「いくら上手でもさ、みじめ~」
冬の定期公演は毎年『くるみ割り人形』で、
去年も私は子どもの主役の「クララ」役をやるとウワサされてたけど、
結局「クララ」も、「クララのお友だち」も、「ネズミ」もやらない。
今年の配役発表の日、レッスンが終わってから、先生が私を手まねきした。
「あなたはいつか必ず『金平糖の精』を踊ることになるわ。
でも、小学4年生では、コンペイトウは、早すぎるものね」
ホントはクララ、踊りたかったけど。
でも、クララにこだわってたら、
コンペイトウも、オーロラも、キトリも、ジゼルも、オデットも、踊れない。
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