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ちょっとウザい気持ちで、おけいこ場を出ると、姫が待っていた。
姫は、私のおかあさんだ。
「お疲れさま、チビ」
姫は私のことを「チビ」と呼ぶ。
私のおかあさんの名前は「姫子」だ。
前はおかあさんのことを、ちゃんと「おかあさん」って呼んでたけど、
最近は「姫」って呼ぶ。
姫は「おかあさん」ってガラじゃない。
姫の店はススキノにある。
姫の店にはレイちゃんというお姉ちゃんが働いている。
壁がガラス張りで、ソファがフカフカしているところが好きだ。
ときどき、お客さんがいないときには、
ソファをステージにして、カラオケを歌う。
バレエのあとで、姫の店へ行くときは、
まずススキノのはずれの銭湯へ行く。
私は汗をかいているから、汗を流すのと、身体を温めるためだ。
銭湯は大好きだ。
スコーンと広くて、洞爺湖とか登別とかの温泉に行ってる気分になる。
おうちのお風呂は狭いけど、広い銭湯では手足をベロンとしてもいい。
「今日のバレエ、どうだった?」
姫が訊いてくる。
「大きいジャンプは楽しかった。
……みんなが「クララ」の話するから、ちょっとウザかった」
「そう」
「かまってられないから、かまわないけど」
「正解だね」
私がクララを踊れないのは、
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