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姫がチケットを100枚売れないからじゃない。
早く大人になって、バレリーナになりたい。
銭湯から出たら、店へ行く。
店にはまだレイちゃんは来ていない。
姫は「戦闘服」に着替える。
お迎えのときは他のおかあさんみたいな格好だけど、
(でもやっぱり姫の方が、キレイというか、カッコいいけど)
戦闘服の姫は、バレリーナみたいにキレイだ。
チュチュみたいなフワフワでキラキラなドレス。
ハイヒールで立つとポアントでドゥミしてるみたい。
キラキラのメイクに、アクセサリー。
「おしぼりお願い、チビ」
でもやっぱし、姫は姫だ。
おしぼりは家で洗濯をして、干さないで店に持ってくる。
それを畳んで、くるくる巻いて、
小さな冷蔵庫みたいなおしぼり入れに入れる。
だいたい、おしぼりが終わると晩ごはんだ。
カウンターの隅っこの席で食べる。
食べ終わるとレイちゃんが来る。
レイちゃんは姫が高校生の頃からの友だちだそうだ。
レイちゃんはいつも私をぎゅっと抱きしめて挨拶する。
姫とは違う、花束みたいな香水の匂いがする。
「おはよ、チビ」
レイちゃんが来たらお店の中に活気が出てくる。
お通しとか、今日みたいにヨヤクのときは、
オードブルとかもたくさんつくるから、店が湯気で暖かくなる。
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