心でコートを着てみること。

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心でコートを着てみること。

心でコートを着ることがある。 そのコートは私の身体にしっくり馴染んでいて、 着膨れもしなければ、きつくもない。 腕の曲げ伸ばしも自由にできるし、 軽すぎもせず、重みで肩が凝ることもない。 親密で、独立したコート。 並んだボタンは、まるでキャンディみたいだ。 ひとつ取って、口に入れてみたくなるように、 こっくりとして甘そうだけれど、手にべたべたとつくことはない。 私が背筋を伸ばすと、コートも私と一緒に背筋を伸ばす。 そして私の背筋を美しく端正に見せる。
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