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そんな彼を変えたのはクラスメイトが言うように松永の死だった。
「みんなには言えないよなあ」
表向きは事故死と言われているが、松永の死因は別だった。
彼等はある本屋に盗みに入ったのだ。そしてそこで罪の本に捕まって、彼等は異世界を旅した。
魔砲使いというグループに入って正義のガンマンを気取っていた日々。ほんの一ヶ月ほど前の出来事だが、あの世界に居た三ヶ月はまだ彼の記憶から褪せていなかった。
あの世界で恋を知り、そして命を落とした一郎はこうして現世に帰ってきた。一方で死体となって帰ってきた松永は、おそらくあの後、彼女に殺されたのだろう。
一郎は友人の死よりも彼女が無事だったことを喜んでいた。
「本屋に寄っていかないか?」
クラスメイトに誘われた一郎は久しぶりに件の本屋、人魚書店に向かった。クラスメイトは新作の萌え漫画を照れ顔で買っていたのだが、一郎は誘われてきただけで買うものも無い。
ふらふらと本を眺めていた彼を目元を髪で隠した女性が声をかけた。
「あら、あなた。GWサバイバーですか。その後の調子はどうですか?」
一郎は最初、何のことかと小首を傾げた。
だが少しして気がつく「GW」とはアレではないかと。
「もしかして、ギルティワールドを知っているのですか?」
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