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「実際に行ってきたアナタ程ではないですけどね。ねえ、ちょっとお姉さんのお話相手になって貰えませんか」
「参ったなあ」
彼女の口ぶりに一郎は興味を持ったのだがいかんせんこの日は友人連れである。勝手に居座るわけにはいかないとは思っていたのだが、レジを済ませたクラスメイトはその光景を見て、春の予感と勘違いをしてくれた。
先に帰ると彼は人魚書店を後にして一郎を縛るモノはなくなり、一郎は彼女の誘いに乗った。
「いつもの私はお客さんのお悩みを聞く立場なんですけれど、今日は逆ですね」
軽い自己紹介によると、彼女は本屋読子というこの店の店主だという。
一郎は自分の話を聞きたがる読子に逆に尋ねた。
「ギルティワールドを知っているアナタは何者なんですか?」
「先程も言ったとおり、この店の店主です。そしてアナタが知っているギルティワールドとはコレのことなんですよ」
読子は神棚に置かれた一冊の本を一郎に見せた。
表紙の題名はギルティワールド、著者名は秋山霧子。
この本は彼女そのものだと一郎はGWサバイバーとして直感した。
「この本……これがあの世界だったなんて」
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