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本屋さんと生還者
背中から胸に向かって大きな穴が開いている。
目の前のにいる少女はうっすらと涙ぐんでいて、俺の怪我を心配しているのだろう。
だがそんなことよりも俺は彼女のことが心配だった。何故なら、俺の背中を貫いたモノは彼女の胸にも届いていたのだから。
「またあの夢か」
ノガミ大学近くに住む高校二年生、番町一郎はよくこの夢を見ていた。
異世界に渡って流されるままに銃を持って化け物やそれを操る悪人と戦っていた彼は、最後に一目惚れをした少女の目の前で命を落とす。
これは夢で会って夢では無い。そんな不思議な過去の体験であった。
「番町くんって最近変わったよね」
「前はなんていうか、莫迦だったからな。松永らの言いなりになって悪いことをやらされてたんだから」
「でもその松永くんが事故で死んで……入れ違いのように彼は人が入れ替わったみたいになって……」
「正直、松永のことはみんな怖がっていたし、アイツの事故は良いことだったのかもな」
かつての一郎は松永という同級生の言いなりだった。よく考えずに友達の頼みだと悪事にも手を染めていた。
それを一郎は悪事とは思っておらず、友達との縁を繋ぐための行為だと思っていた。
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