第一章 『お世話になります、沙紀先輩』

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領家沙紀(りょうけ さき)~  連日の雨、この梅雨の時期に溜め息をつく人は多く、それは自分も同じだった。  部活帰り、ザーザーの雨に降られ、地面に打たれた雨粒が跳ね返って、靴下を濡らす。  気持ちが悪いな、と思いながら自宅に帰って洗面所に行っている時に、何やら聞き逃せない声がこちらまで聞こえてきて、開けっ放しにされていたリビングに入る。 「二人を預かるまで、一週間を切ったね」 「私、大丈夫かしら」 「大丈夫だよ。僕はこの間実際に会ってきたけれど、二人とも良い子そうだった」 「お父さん、どういうこと?」  “預かる”との摩訶不思議な単語に引っかかり、普段家でも口数の少ない私が、珍しく二人の話に思わず口を挟んでいた。
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