再会

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「もっと挑発すりゃよかったな」  ぼやきつつも、男の足首を持って店の裏に引き摺って連れていく。手を離せば、力の入っていない足はバタリと音を立てて落ちた。 「見栄えが悪いんでな。ゴミが散らかってるとうるさい人なんだ」  整っているからこそ酷薄さが際立つ、神経質な雇い主の顔を思い浮かべ苦笑する。あのままにして、警察など余計な厄介が来ても鬱陶しい。   ようやく店から出てきた二人をベンツに乗せ、自分も同乗する。伊勢崎の住まいをまわって、松岡さんをマンションまで送る。これでオレの今日の仕事は終わりだ。  松岡さんのマンションもさっきのキャバクラも、同じ翔竜会のシマ内のため、いずれにしろ近場だ。マンションから徒歩で自分のボロアパートまで帰る途中、さっきの若い男のことが気になった。どうでもいいことだがなんとなく気が向いて、いつもの道を変えてさっきの店の前を通ることにする。  男は通りまで這い出ていた。通り過ぎる人々には浮浪者同様に見えないものとして無視され、何の言葉も無く通り過ぎられている。  足元で蹲る男を見下ろす。     
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