再会

7/11
281人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
 男たちはまだ怒りが収まらないのか、さらに脇腹を体が浮くほど蹴り上げる。  あれは効くなぁと眺めつつ、灸を据えるにしてもそろそろ潮時だろうと予想する。  案の定、くぐもった音が男の身体の中から湧き起こり、喉の奥から爆発したみたいに吐しゃ物がしぶいて出た。吐くと言っても水ばかりだ。ろくに食べていないところを見ると、金に困った末の出来心か。  キャメルのズボンにグリーンのナイロンジャンパーといった服装を見ると、大学生ぐらいに見える。だとしたら自分と同年代だ。  暗い地面に広がった液体は、汚物という存在に反し、夜のネオンを反射させてきらきらと光る。星も見えないこの街にはお似合いだ。 「きったねぇなぁ」  まき散らしたものを擦り付けるように頭を容赦なく踏みつけられ、若い男は呻いた。肩まで伸びた髪が、己の吐いた酸っぱい液体を吸い取ってゆく。  完全にグロッキーの相手に、男たちはまだ制裁を終わらせる気はないらしく、三者三様に足が振り上げられる。  そんなに物足りないなら、オレとケンカしてくれればいいのに。  その思いつきはとてもいい暇つぶしになりそうだった。三人まとめてなら、そこそこ運動になるだろう。 「たらたらいつまでもウゼェんだよ」  オレの声が男たちの動きを止める。     
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!