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「お前らセックスもそんなしつけぇの? いい加減どっか行けよ」
下っ端らしいチンピラがオレに何か言い返そうとするのを、金持ち男が引き留めた。
「あんたとやりあう気はないよ」
場所を変えることにしたのか、チンピラ二人がぐったりとした男の両腕を掴んで引きずる。
落胆した。売られたケンカは買うが、勝手に売りに行っては仕事をサボっていると思われる。
去る者は追わずとばかりに眺めていると、引きずられている男と目が合った。長い前髪の向こうの瞳は、呆然としている。
助けてもらえるわけではないと知った男は、最後の足掻きとばかりに必死に抗う。
「わあああっ」
男は顔を蹴られても叫んで暴れ、なりふり構わず声を上げた。
「クソっ!」
男たちが渾身の力を込めて暴れ喚く男を蹴り、その内の一発が胸を正面から蹴り抜いた。顔面を鼻血で真っ赤に染めた男は、息を詰まらせながら、地べたでのたうちまわる。
「もういいっ! 行くぞ」
忌々しげな声とともに、ようやく男たちが背を向けて去っていく。
心臓を蹴られた余韻で呼吸が出来ぬまま胸をかきむしっていた男は、しばらくして喉で高音を鳴らしながら息を吸った。やっと空気を肺に迎え入れたかと思ったら、男はそのまま地面に突っ伏せたまま動かなくなってしまった。
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