第四話 ネ族の懲罰

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第四話 ネ族の懲罰

 話の後はガルジアと共に家の扉を出て鍵を閉めて護衛する形で歩くことにした。もちろん、外で待っていたテレジア、シーマ、少し離れたところにいたセルビィウスも付き従う。歩いている間は妙に皆黙り込んでしまった。そのせいか一行が歩く中で出会う人々は静かに挨拶しながら頭を下げるのが精一杯という感じになってしまう。  人通りの多い場所に出るとガルジアに尊敬の念を持つ人か市民が挨拶した上で道を通る人に「道を開けろ!!」と叫んで道を開けさせていった。 「これでもアントウェルペンの現状にお父様は嫌なのですね」  テレジアが会話を聞いていたことを普段では隠して知らんぷりする癖に今回は妙に怒った風にガルジアに噛みつく、よほど腹が立っているらしい。 「…私は健全な人々による経済発展を望んでいるにしか過ぎない…」 「お父様は理想が高すぎます。倫理を求めるくらいなら法と秩序で縛り付ければ良いのです」 商人というよりは経済学者思考の政治家という思想が強いテレジアらしい考え方だ。 「商人というものは簡単には法と秩序に頼るべきではないのだ」  それに比べるとガルジアは人間帝国、全盛期のセルギア王国といった大国と渡りあった時代の思考に今だに取り付かれている。 「それは昔の話です。お父様もご存じの通り、今この世界は混沌としてます。我がアントウェルペンこそ自由と平等の守護者として法と秩序を回復する立場に立つべきなのです。いつまでも商人気取りで大国を渡り歩いても大国が無ければ話にならないでしょう?」  テレジアの言う通り、かつてと違ってガルジアのような人が大国の利害を利用して国の利益を増やしていくという手法は時代遅れとなった。今は旧秩序から新秩序への移行が求められている時代である。 「大国は今だに存在しているだろう?それに人々に倫理の大切さを説いて適切な市場を構築して商売して、金銭を稼いでアントウェルペンに還元していくやり方が正しいのだ」
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