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やっぱり頼千にも、こんなに優しいということは、なにか裏でもあるんではなかろうか――
「知都世?」
「ああ。うん。奏多さんちもお喋り過ぎだよ。いくらご近所さんだからて、お客さんの情報を第三者に流さないでほしいものだね」
「男と一緒だったのは否定はしねぇのかよ」
「うん。しない」
私は嘘はついていない。
「そう、か」
頼千の声が小さくなった。
一緒に食事をした相手と言えば……
「そういえばさ、頼千、男子トイレで睦月に会ったんだって?」
私は頼千のおかしな言動を思い出して笑いがこみあげてきた。
「そんなことは今は関係ねーだろ」
頼千は怒った口調でそうは言ったが、
「どどど、どうしてそのことを知ってんだよ。お、俺は誰にも話してねぇぞ」
電話越しでも分かる。今の頼千は明らかに動揺しているしパニックになっているだろう。
「あははは。頼千、動揺しすぎ。そりゃあ私もびっくりしたけれど」
「ど、どこ情報でその情報を手に入れた!? 俺がオマエに話したと誤解されたら地芭さんにシメられちまうじゃねぇか」
どうやって女装姿の睦月が頼千を脅したのかはわからないけれど、頼千の声は震えていた。
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