66人が本棚に入れています
本棚に追加 独房には施錠がされているが、高位の魔術師であるリードにはあってないようなものだ。易々と解錠し、中に踏みいる。
「ようやく、見つけたよ」
ろくに視界の利かない、洞穴のような独房に灯りを生み出す。
目当ての人物は、両手両足を拘束されたまま簡素なベッドの上に転がされていた。酷い垢の臭いにリードは顔をしかめ、両手を垢の塊のような男へと翳し、呪文を口ずさむ。
程なく、室内を照らす灯りとは別の光が男を包んで消えると、かび臭かった独房は無臭になり、垢の臭いも消え去った。
「伸び放題の髪の毛ばかりは、どうしようもない。むさ苦しい髭も整えてしまいたいが、あいにくと不器用でね。あとあと、ディランに頼むとしよう」
「……魔術師が、どうしてここに?」
長い軟禁生活を強いられていたわりには筋力だけで体を起こし、男は白いものが混じった黒髪の合間から、鮮やかな赤い目でリードを睨み上げた。
「政府の、追っ手か?」
若干のおびえを見せる男に、リードはゆっくりと首を振る。
「政府の魔術研究所なんかに、貴方は渡さないよ。しかし、希代の魔術師トロンが愛し、魔術の全てを注いだ傑作のはずのあなたが、どうして競売場の地下で、低俗なβどもを相手に男娼をしているのか?」

最初のコメントを投稿しよう!