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「あの…正登さん、だけど明日の午前中は用事があって来れないんです。昼食にお好み焼きを用意して冷蔵庫にいれていますので、レンジで温めて食べて下さいね」
「ああ、わかった。キミも色々と忙しいんだろう、こっちは勝手にやっとくから心配しないでいいよ。帰り道、寒くて暗くなるのも早いから気をつけて」
晩秋の午後は、まったりとする時間も短く闇が押し迫る。
「ありがとうございます」と頭を下げて、ピンクのエプロンを外してたたみ、手際よくバックに仕舞う。
そして、彼女は階下の、俺が滅多に降りていくことのない街並みに姿を消した。
出会ってもう一ヶ月になるが、俺は葵のことをほとんど知らない。
寝たきりの母を養うために、十代の頃から懸命に働いてきたと聞いたことがあるが、そのほかのことは一切わからない。
恋人は……いるのだろうか?
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