season.5

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「あら、アルバムですね。見せてくださいーって、もう見ちゃってますけど」 葵がペロッと舌を出した。 いつものように部屋の片付けをする葵が、キャビネットの奥から古いアルバムを引っぱり出してきた。 「これが、正登さん?お父さんとそっくりですね!」 パラパラとページをめくっていた葵が、父と母と3人で写っている幼い俺の写真をみて尋ねた。 「そう、よく言われるんだ。あんまり嬉しくはないけどね」 親父は冷酷な人間だった。単に人情や思いやりがないとか、そういうレベルではなくて。 人を人とも思わないような性格、 例えば、物差しとかハサミとか、洗濯機とか便利な道具のように、 利用できるうちは、人をトコトン利用して、いらなくなると情け容赦なく切り捨てる。 そうやって、自分の事業を拡大していった。 そうなると一番の犠牲者は家族となる。 俺は親父に遊園地に連れて行ってもらったこともなければ、運動会を見に来てもらった思い出もない。
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