量産型

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 私は放送芸術の専門学校に通う、友人の梅反カツキに「うちの学校祭にこないか」と誘われた。それで、賑やかな都市部へやってきた。ビルの並ぶなか、ガラス張りの派手なところへやってきた。  入口には星空を眺める二人をバックに、第6回学校祭と大きく書かれたポスターがあった。自動ドアを抜けると、すぐのところにパンフレットを配るスタッフがいた。私はそれを受けとると、近くの目立たない場所で開いてみた。  特別ゲストのステージ、学生による演劇などのパフォーマンス、カレーにチャーハン、甘い物の出店の情報など様々だ。  時間を確認しようとスマホを取り出す。SNSであいつからメッセージが届いていた。 『着いたか?』  それに『ついたよ』と返信した。  私は誘われたからなんとなく来た。だから行きたい場所もなく困ってしまった。だから、暇潰しに入口あたりの壁をみた。ポップなアニメか漫画風のキャラが描かれていた。  放送芸術の専門学校だけあって、そこは変な髪色ばかりだ。私もアニメや漫画を楽しまない訳ではないので、その髪色に対して理解はある。でも、あるときふと「その髪色はないだろ」とツッコミをいれたくなる。  そんなことを考えていたら、変な髪色の代表。ピンクの髪色のキャラクターを無性に見たくなった。検索しようとスマホを取り 出した。友人から返信に対する返事が送られてきていた。 『六階に来いよ』  行く場所もないので『わかった』と素早く返信する。それで、近くにあったエレベーターに乗った。  エレベーターにはピンク髪の少女が描かれていた。これだよこれ。思いつつ絵に見とれながら、六階のボタンを押そうとした。しかし、その時、私は幼き頃のいたずら心というか、好奇心をくすぐられるようなものを、見つけてしまったのである。  それは黒いテープで隠されたボタンだった。恐らく、位置的に二階のボタンなのであろうが、それがとにかく押したくなった。学校側は、来客が押さないように塞いだのだろう。だが、だからこそ目立つし気になる。  自分のなかの幼さと戦った。大人ならば、これは押してはいけないものだと察する。そして素直に目的の階のボタンを押すだろう。しかし、悪餓鬼ならば、押しちゃダメと書いてないという理由で、押すだろう。では大人と幼さの平和的解決のために折衷案はあるか。考えてみると、それが見事に存在していた。   
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