第三章

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クライマックスとは、人生に辟易していた主人公が様々な人たちに触れ、人生の素晴らしさに気づき、そして導いてくれたヒロインと再開するも彼女が力なく崩れ落ちてしまう。主人公はヒロインの元に駆け寄り助け起こす、という所から始まるのだが。  ここが問題なのだった。 「起きてくれ! 君がいてくれたから僕は……人生がこんなに素晴らしいものだと……」  新庄の指導の甲斐もあり、俺の演技は多少は見られるものになっていた。今も主人公の気持ちに入りきっている。なんで彼女がこんな目に……頼むなんとかいってくれ! お願いだ! 何か俺に…… 「やっぱやだ」  え? どうしたヒロインよ? なんとかとは言ったけどそんな辛辣なこと言わないでも。 「やっぱりあたし、こいつが主人公なんてやだ! なんで信治以外に触られないといけないの!?」  えぇ~。ヒロイン役の荒川が突如キレ出したのだ。加えると、信治とは荒川の彼氏、井上信治のことである。サッカー部に所属していていかにもイケイケな野郎である。確かに俺と比べるべくもない。 「いやいや、荒川これ劇だしさぁ。重要なシーンだから」
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