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第二章
あれから一ヶ月がたち、いよいよ学内全体が学祭に向けて動き始めていた。
我ら二ーBの劇というと、すでに小道具班、衣装班、そして役者班に分かれて各々が活動している。
現在、教室には小さな壇上を舞台に見立てて演技練習の真っ最中だ。
「お嬢さん、私のために贈り物を~」
普段はやかましい男子も今は劇中のキャラになりきろうと頑張っているが、あまり成果は出ていない。率直に言って、下手だ。
学生の劇なのでまぁこんなものだろうと思うが、我らが新庄監督はそれでは納得しない。
「松井棒すぎ! もっと感情込めて!」
「わ、わかったよぉ……」
新庄は宣言通り、本気で劇に挑んでいた。それは遊び感覚で参加していたクラスメイトを圧倒するほどに。
「それじゃあ、ここから主人公の登場シーン!」
監督の指示に乗っ取り俺ももそもそと登壇した。
そう、なんと驚くことに俺こそが主人公なのです。
一ヶ月前、当然周囲は反対した。大変失礼な話ではあるが、当の俺が一番納得していた。俺に主人公が務まる話などあるわけがない。
しかし、新庄は頑なにそれらをはねのけた。
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