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「最初に言ったように、私は本気で劇を作りたくて、演技指導にもめちゃくちゃ口出すつもり。だから、主人公役は一番口を出すし、時間もかかるから舞台監督役の人にしようって決めてたの!」
あとね、と新庄は続ける。
「最初に聞いたときに手挙げてくれる積極的な人だったらいいなぁと思ったけど誰も挙げないし、それなら押しに負けたとはいえやると言ってくれた古谷がいいかなって」
不満げな表情を浮かべた者は何人もいるが、誰もこれ以上反論出来るやつはいなかった。
そして、現在。俺は宣言通り新庄にしごきにしごかれていた。
「違う、台詞はちゃんといって!」
「声が小さい!」
「もっとそこは悲しそうに!」
ただでさえ、人前に立つだけでも冷や汗なのに、鬼監督の指導でてんてこ舞いだ。
「じゃあ今日はもう終わりにしよっか」
ようやく終わったかと胸をなで下ろした。教室から次々とクラスメイトが出て行く。さて、俺もいくか。リュックを担いで出て行こうとするが、後ろから何かに引き留められた。
「古谷はこれから更に演技指導です。もうちょいがんばろー」
はい、なんとなく分かってました。
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