第二章

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「なるほどな」 「あ、でもこれじゃあ本気の理由にならないかぁ」  ちょっと恥ずかしいけど真面目に聞いてね、と新庄は続ける。 「高校生でいられるのも今だけじゃない? 確かに来年もまだあるけど、今この時はもう戻ってこないわけで、それなら一度きりの今を全力で楽しみたいじゃん。それなら文化祭が一番本気出せる良い機会かなって思ったんだ」  俺は目を丸くした。別に、新庄が語った理由に驚いたわけではない。なんなら予想通りだ。  そう語った彼女が耳障りの良い言葉をなぞっているわけではなく、嘘偽りの無い本気で言っているのだと分かったからだ。 「凄いな新庄って」  思わず本音が零れ出た。 「な、なにを急に? 真面目に聞いてって言ったよね!?」 「いや、本当にそう思ったんだ。新庄ってすげぇ~なって」  本当だ。こんな風に真剣に生きている人間がいるとは。俺とはやはり大違いだ。 「そ、そう……?」  褒められ慣れてそうな新庄が、顔を真っ赤にして狼狽している。  俺はその時胸に鋭い痛みのようなものを感じた。何かは分からないが、それでも俺の中で何かが変わったことを実感で理解した。 「新庄、俺頑張るよ」 「うん……」  まだ照れくさそうにしている新庄を見て、平静が保てない。得体の知れない衝動が疼き、この身を任せてしまいそうになる。 「でももうちょい指導優しくしてくれよ」  どうにかそれを押さえ込むために、軽口を吐いて自分自身をも誤魔化そうとする。どうしてしまったんだ俺は。 「はは、ありがとう。でも指導は今後も厳しくしていくから」  軽口で返す新庄の笑顔はまるでキラキラと輝いて見えた。  やっぱり俺とは正反対だ。俺みたいな日陰者では到底届かない所にいる。でも、新庄……俺も君について行ったらそこまでいけるのか?  舞台を照らすスポットに俺なんかが入ってもいいのかな?  俺は主人公になってもいいのか?
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