第一章

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

第一章

 文化祭、と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろう。輝かしい青春の思い出。人が溢れかえり、活気に満ちた学内。涙を浮かべる女子たち。他校から遊びにきた女子にお前が声かけろよ~とやり合う男子たち。後夜祭では火を囲んでフォークダンス。高校生活一番の思い出だ!  こんなものだろうか。だが、例を挙げて貰って恐縮だが、それらは全て表層的なものに過ぎない。いや、言い換えるとそれらは一部の上位カーストの発想である。  カースト下位を転がるやつらは、文化祭においても澱んだ海底を生きているのだ。  学内では人が溢れているので、人気の少ないスポットすら奪われ、そもそも喧嘩するような相手などなく、涙を浮かべる女子達との温度差に呆然とする。  他校の女子どころか、自分のクラスの女子にすら話しかけられないし、後夜祭にはそもそも参加しない。  これが文化祭の裏側で起きている現実だ。あくまでこれは友達の友達の話であって、決して去年の俺の話などではない。  そんなわけで、俺は非常にこの文化祭というイベントが苦手であり、今すぐにでもこの場を抜け出したい所存である。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!