白い腕

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 夢の中で、私は目覚めました。ソファの上で。隣には、彼女がいて。マグカップを手に、TVを眺めていて。それから、ちらと私を見て。 「あ、おはよ」  そうだ、私は彼女を家に誘ったんだった。そう考えていました。 「よく寝てたけど、やっぱり疲れてるんじゃない? 私来て大丈夫だった?」  マグカップを持つ彼女の手はやっぱり綺麗で。欲しいなあと思って。 「………そんなこと、ないよ。私が呼んだんだからさ」  彼女はシンプルなデザインの腕時計をつけていて。その文字盤を見て私は、結構長い時間、うたたねをしてしまったのだと気付いて。夢の中で寝ていたなんて、おかしな話だなあ。あれ、そういえばこれは夢だったっけ。  明晰夢、でしたっけ。夢と自覚している夢。たまにあるんです、私、そういうこと。  夢だったら。  夢だったら私、彼女の腕を奪っても許されるんじゃないか。 「ねえ私その腕が欲しいな」  小声でそう口走ると、彼女はうまく聞きとれなかったのか、意味がわからなかった為か、首をかしげて言うんです。 「ん? 何だって?」  それが、いつもの彼女の表情だったから、いくら夢とはいえ、きっと「はいあげる」なんて言ってくれないだろうと。  だから首を絞めたんです。  最初は、キッチンから包丁を取ってきて、勝手に切ってしまおうと思ったんですね。でもそれは、嫌がるだろうなって。抵抗されたら困るなあって。だったら、動けないように縛ってしまおう、ロープを持ってこよう。いいや待てよ、それならもういっそのこと、息をとめてしまえば良いんじゃないかな。って。  ね、それなら彼女の悲鳴も聞こえないじゃないですか。  腕を切るのはきっととても痛いでしょうし、彼女は大事な友人なんですよ? 辛そうな姿を見るのも、痛い思いをさせるのも、耐えられなくって。  だから何も感じなくてすむようにしたんです。  私が首に手をかけた時、彼女はぽかんとして何も抵抗しなかったから、私はそのまま力を込めて、気付いたように彼女が暴れ出したから、白い綺麗な腕が何かにぶつかって傷がついてしまうんじゃないかって、すごく怖くなりました。だけど、一生懸命絞め続けたら、やっと大人しくなってくれたんです。  ……夢の。  夢の話ですよ。
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