1.足りないもの

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スッと目の前の障害物がなくなった。 風は私を包み込む。 あと3歩 自由 あと2歩 自由に あと1歩 自由になれる。 空を全身で掴むように  静かに私は飛んだ 淡い視界が、正確になってゆく。 初めての景色に戸惑いながらも、爽やかな空をみる。 「ここは、どこ、、」 腕につながったチューブ。1本ではない。 喉につながったチューブ。声がだせない。 状況を理解できぬまま、 看護師と思われる女性がカーテンを開けた。 「あすかちゃん、いつもの時間よ」 そういって慣れた手つきで体温を測る。 ベットの隣のテーブルに いくつかの手紙があるのを確認した。 筆跡は、、小学か中学くらいだろうと思われる。 ーーー明日伽ちゃんへ。 明日伽という名に覚えはない。 私の本当の名前は、、あれ、でてこない。 看護師はすぐに去っていった。 聞きたいことが山ほどあるが、声がでない。 細い腕と髪の間を心地よい風がとおる。
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