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プロローグ
「夜の街」・・・そこは、利害の一致、仮初の愛、肉欲、一時の安らぎを得るために、男女、種族問わずが集う底なしぬ沼のような娼館街。
どこの国にもある街だが、この国―フェリスティ皇国―の街には、他国にも知られているほど有名な「五傑集」と呼ばれる裏社会の中心人物たちがいる。
五傑集は、次の五人によって結成される、街の方針を決める会議での発言権が最も高い五人である。そして、その五人の中でも順位は存在する。
第五席は、『十文字の赤槍』と呼ばれる、猫獣人のヴェリスト・へウゼン。赤茶の毛に、珍しい十文字の槍を使うことから来た二つ名である。
第四席は、『華陽姫』と呼ばれる、龍族の女性だ。彼女は、『双龍館』という店で、働く女性で、輝く金髪に青い瞳の華やかな顔つきで、彼女の舞はまさしく太陽のような華であると言われている。
第三席は、『血染めの大剣』と呼ばれる、人族の上代祐一(かみしろゆういち)。茶髪に黒目だが、左目は眼帯に覆われ、隠しきれない傷が少し見える。敵対していた組織との抗争中に裏切られ、その視力を失ったらしい。上代組と呼ばれる組織の組長を若いながらも、立派に勤め上げている。しっかりとした青年らしい体格をしている。
第二席は、『神速の懐剣』と呼ばれる、人族の原田斎(はらだいつき)。黒目黒髪の男で、原田組の次期組長だ。かわいらしい外見とは違い、一撃必殺を得意とする剣術を身に着けている。現在は停戦中だが、原田組と上代組とは犬猿の仲だ。
しかし噂では、上代祐一と原田斎は幼馴染の恋人同士で、互いの組織を何とか仲良くさせようと奮闘中らしい。
そして第一席は、『月凍姫』と呼ばれる龍族の女性だ。彼女は『華陽姫』の姉で、双龍館の主をしている。青味のある銀髪に、青い目をしている。二振りの刀を差せるように男装をしていることが多い。左右の腰に帯刀しているため、髪色が変わっていてもわかる。
彼女は、月さえ凍えさせるといわれるほど、水魔法の派生形、氷魔法が得意で、一度敵に回れば、敵を凍らせ砕くという噂がある。
夜の街で、これらの五傑集に逆らえば命がないと思ったほうがいい。
彼らは狡猾で残忍さを持ち合わせている一方で、身内にはとことん優しくする。したがって、彼らの守護を求めるものは多い。
彼らからは昼夜問わず、何人たりと逃げることなどできはしない・・・。
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