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第1章
― 1話 ―
この街の朝は比較的にゆっくりとしている。夜更けまで起きている者が殆どで、華やかな明かりが街中に広がっているため、あまり早くに寝れないというのもある。
特に妓女は夜が遅く、下働きの者もそれなりに遅い。よってこの街の大きな『店』は昼と夜の二つに分かれており、どちらも起きていないといけない者たちは、新しい客が来るまでの間しか休めない。
・・・まあ私のように、あまり睡眠を必要としない種族の者は、昼夜を問わず働いているが、この街では、我々『五傑集』の手により、一日5時間以上の睡眠がまとめて取れないものがいる『店』は潰される。この街では、無理をしない程度に働くことが厳密に定められている。
・・・はずなんだが、どうやら舐められていたらしい。
私の経営する『店』、『双龍館』のお得意様(この国――東雲皇国――の貴族、沖田子爵(現国営部隊、第1部隊隊員)の三男様、沖田落葉(らくよう)様だ)からのタレコミで発覚した。
我々五傑を小馬鹿にし、潰せるもんなら潰してみろとばかりに、ルールを破りまくった経営をする莫迦がいる。
まとめて5時間ではなく、30分ごとに客を取らせ、一日に4時間弱しか眠れない。栄養状態も悪く、余計に経営状態が悪化。さらには、女たちに暴力をふるい、年端もいかぬ子までこき使い、生まれてくる赤ん坊は口減らしのために殺し、男たちには客を脅してまで余分な大金をもらってくるように指示を出しているらしい。
さらに、我々『五傑集』の会議に出す報告書にも、嘘の記載をする、余計に金をせびろうとするなど、あまりにも腹立たしい。
私はほかの4人にも連絡を取り、それぞれの派閥を引き連れての掃討戦を行うことを通達した。
「さて、今日も頼むよ?私の愛刀たち」
私は両腰に差した細めの太刀、翡翠(かわせみ)丸と山翡翠(やませみ)丸に話しかける。
左の青味の勝った刀身に鞘は臙脂色、柄は青地に白い滑り止めの布を巻いてあるのが翡翠丸、右の黒い刀身に白い刃が光る、鞘も柄も黒で白い滑り止めの布を巻いてあるのが山翡翠丸だ。
二振りは魔剣に分類されるもので、翡翠丸は形あるものを斬れ、山翡翠丸は形なきものを斬れる。しかも対になる刀なので、二刀流のできるもの、そしてそのものの腕によって、どのくらい斬れるかが決まる。
「さて、掃討戦と行きますか!」
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