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口を数字の3のようにし、この嫌味なルームメイトに聞こ
えないくらいの声で言ってみた。
皆んな口を揃えて俺のことを〈落ちこぼれのシャロ〉という。
ここ帝都【ネーフル】には
能力育成学校(アビリティ・スクール)と言う8年制の
まるでお城のような学校が街の真ん中に位置するのだ。
卒業すれば色んな役職につけるんだ。
騎士・魔道士・教師そして…冒険者だ。大半の卒業生が
冒険者への道を歩き出す。
ただし、卒業条件の事なのだが…。
その名の通り、能力を8年間で発揮させなければいけないんだ。ここには類い稀なる才能で入学
あるいは、入学する前からアビリティを使えてしまう
いわゆる…天才が集まる学園。
言ってしまえば、8年間もいるのにアビリティを
引き出せてないのは俺だけなんだ。
なので着いた名は…。
【落ちこぼれのシャロ】だ。
羽ペンを音を立てないように、そっと…机に置き
筆記を後にする。
さっきまで盛り上がっていた気分が
一気に冷めてしまった。
「はぁ…。卒業できなかったら住み込みで働かないとな」
満月に雲が微かにかかる静かな夜。
月夜に照らされながらため息をつく
この青年【シャロ・ベルマ】。
この青年が後に一人の少女と共に冒険譚に語り継がれようとする事はまだだれも…
知るわけないよね。
~【盗賊少女と冒険譚】~
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