1人が本棚に入れています
本棚に追加
桜、桜
綺麗な桜
あぁ、なんて美しいのだろう。
桜の花びらが柔らかい春風に乗ってひらひらと舞う姿は、とても雅であり、平和を連想させる。
城の一室。
格子を開けた窓から見下ろす桜。
美しく咲き誇る桜。
地面へと舞い散る桜。
風に乗る桜。
どれもこれも美しくて、無意識のうちにため息をついてしまう。
この時間がずっと続けば良いのに。
胸の内でぽつりと呟いて、また一息つく。
と、風に乗って舞い上がってきた花びらが一枚、部屋の中に舞い込んできた。
それを笑顔で見つめて、上手に手の中に収める。
少し青がかった黒い髪に、漆黒の瞳。
やや切れ長のその右目はとても優しくて、どこか切ない。
顔の左側、大半を眼帯で隠すようにしているものの、その顔付きは整っていて、かつ幼い愛らしさが残っている。
まるで、汚れを知らない生娘のようだ。
潤んだ唇に、きめ細かい肌。
着物から覗く首元には、なんとも言えない色気がある。
誰の目から見ても、美人に分類される人間だ。
そんな美人さんは、美しい桜をただただじっと眺めていた。
僅かに浮かべた笑みは儚げで、どこまでも他人を魅了する、なにかを含んでいる。
一体どれほどの時間、一人でこうしていたのだろう。
突然開いた襖に大袈裟に驚いて、目を見開いたままばっと振り返る。
最初のコメントを投稿しよう!