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高弥の意識が回復するのを待ってからユキは帰路に着いた。
朦朧としていたが、視線の先にユキを見つけると高弥がほんの僅かにだが微笑んだのを見付けて、安堵の溜め息を吐いた。
家に帰ると、既に永瀬は帰宅していた。
「おかえり。ちょうど夕食を摂るところだった。ユキも今食べるか?」
コットンパンツにTシャツというラフな部屋着に着替えた永瀬の指先を思わず目で追ってしまいながら、ユキはこくりと頷いて
「あ、僕がやりますので先生休んでて下さい」
と言うと
「幸いにも短い時間で済んだからそんなに疲れてはいないさ。佳代さんが作って行ったものを温めるだけだから」
と笑った。
永瀬の言うとおり温めるだけだったので、ダイニングテーブルにはあっという間に食事が並んだ。
「先生に高弥くんの手術をお願いする前、散々先生の論文や手術のVTRなどは見たんですが、やはり手術痕が小ささや手術時間の短さは素晴らしくて直接見れて良かったです」
ユキがそう切り出すと
「患者の負担が小さくなるように考えていったらああなっただけだ。頭切って脳を弄られるなんて考えただけでも凄く辛そうだからな」
と、ふと笑った。
面と向かってはっきり君に褒められると照れくさいなとも。
そう言って綺麗な指先を動かして食事をする永瀬をユキはずっと見ていたいような不思議な心持ちになってしまい慌てて食事を済ませて部屋に駆け込んだ。
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