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それは、偶然ではなく
「は………っは………」
うそ………何で?
くちびるから燃えそうに熱くて、喉が締め付けられるほどあまったるい吐息が溢れる。
抑制剤は医者に処方されたとおり飲んでいて…こんなこと今まで一度もなかったのに。
彼のテリトリーで香る圧倒的なフェロモンの香りに脳髄が掻き回される。
もちろんこの香りの主はこの車の主のものに他ならない。
今まで誰のフェロモンにも当てられたことなどなかったというのに。
どくん…どくん…
心臓が早鐘のように鳴り始め…
じゅわり……
はっきりとわかるほど、奥の孔から蜜が溢れてきたのがわかる。
「……っは…は……ふ、」
吐息が乱れて……
躯が、お腹が……熱い……
躯の熱く潤うところを貫かれたくておかしくなりそうな欲望を認めたくなくて頭を振ると、パサパサとシートにぶつかり乾いた音を立てた。
ユキのあまい蜜のような香りがよりいっそう薫って車を運転する男を煽ることも気づかずに。
ユキ──随分と待ったよ。
男は己の創った複雑に絡み合った蜘蛛の巣のような罠にかかった獲物を見て、静かに嗤った。
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