とろけて混ざる

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とろけて混ざる

 二度と己の元から逃げるなど考えることが出来ないように、アフターピルを取り上げ発情期が終わるまで二人で籠った部屋から出ることを許さず何度も何度も子を孕む可能性のある性器に、子種を注ぎ続けた───  あの狂おしくも、甘く愛おしい時間から暫く経ってからのこと。 「ちょっと……ユキ真っ青じゃない、大丈夫?」  朝の回診を終えたユキが一直線に医局の一番傍にある職員専用のトイレに駆け込んで、十分ほどした後。  ヨロヨロと出てきてナースステーションの前を通りかかるユキを見掛けた看護師の奈美が駆け寄ってきた。年齢こそはユキがいくつか上だが同じ年に同じ小児科病棟に配属された奈美はユキの何でも相談出来るとても親しい友人だ。 「うん……もしかしたら胃腸炎に感染しちゃったかも。院内感染広げたらいけないから俺、今日はもう帰ろうと思うんだけど、部長見当たらなくて」  真っ青な顔をしてユキは奈美に告げる。 「そうした方が良さそうね。部長には私から言っておくわよ」 「ありがとう。助かるよ、奈美」  真っ青な顔のまま帰る支度をするために歩き出したユキに奈美はもう一度声をかける。 「ねえ、ユキ。それってもしかして……」  何かを口にしかけたと同時に奈美は看護師長に呼ばれてしまった。 「俺は大丈夫だから、早く奈美は戻らないと」  後ろ髪を引かれるような気持ちで仕事に戻った奈美を見送るとユキは深く溜め息を吐いた。  ウィルス性の胃腸炎は感染力が強い。免疫の弱っている子供たちも多い小児科での勤務は完治するまで言語道断だろう。それにオペの予定が詰まっている永瀬に移すわけにはいかない。ユキはしっかりマスクを着けると足早に小児科病棟から去った。
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