第1章

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求人情報誌を眺めていた俺の目に映ったのは、4月と10月は幾日か、5月6月は月の半分程、7月8月9月は毎日残業続きになりますが、それに見合っただけの給料と10月半ばから4月半ばまでの長期の休暇を約束します、という求人情報だった。 これを見て俺は即座にポケットからスマホを取り出し、この会社に電話をかけた結果、俺は異世界に連れて来られ、今、先輩に連れられてお得意様周りをしている。 お得意様の会社で名刺の交換を行い、業務の引き継ぎの話しをしている時だった。 互いに、「暑いですね、暑いですね」と言い合っていた先輩と先方の担当者の2人の身体が、俺の目の前で溶けて行く。 それを目撃して俺は悲鳴を上げた。 「ギャァァァァーーーー!!」 悲鳴を聞いたらしい男性が応接室のドアを乱暴に開け、中を覗き込み液状になった2人と俺を交互に眺めたあと俺に声をかけて来る。 「あんた新人さん?」 「は……はい、な、何が起こったのでしょうか?」 「この世界の人間は気温が30度を越えると、身体が溶けちまうのさ」 「え!?ど、どういう事ですか?」 「私も5年前君と同じ体験をしたから、説明してあげよう。 今言ったようにこの世界の人間は30度を越えると溶けてしまうが死んだ訳では無く、30度を下回ると元に戻るから心配しなさんな。 要するに、4月から10月までは暑くてこの世界の人間は仕事にならないから、私や君のような異世界人を連れてきて仕事をさせているのだよ。 今では何処の会社でも、私達のような異世界人が何人か在籍しているから、仕事はスムーズに回っている」 彼は一度話しを止め先輩だった液状の物を指差してから、また話しを続けた。 「あんたの上司? 先輩かな? も気温が30度を下回ったら元に戻るから、彼を此処に残して、君は次のお得意さんの所に行きなさい」 「は、はい、ありがとうございます」 「君もこの世界に2~3年いれば慣れるよ。 頑張ってな!」
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