『夏目 雛小』

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 先生は彼女のポシェットをベッドの脇にあるサイドボー ドに置いてから、保健室を出ていった。 「……………………」  ………………………………。  …………………………。  ……………………。  ……暇だな。  んー…………保健室、物色するか。  何があるのか知ってても損はないだろうし。  そっ、と夏目の傍を離れ、なるべく音が立たないようゆっくりと仕切りのカーテンを引いた。歩き回ると足音が立つのでその場から室内を見回す。すぐ目につくのは掲示物。人体のなんやかんや、薬の正しい飲み方、生活習慣病予防などのポスターに、視力検査で使う「C」の羅列(ランドルト環というらしい)。壁に付けるように置かれた低い書棚にはフラットファイルがいくつかと書籍、血圧計などが収められている。  あ。  そういや保健室利用記録、書いてないな。  フラットファイルのひとつにその背表紙を見つけて気付いた。  ……書いておくか。  そう思って足を踏み出しかけたとき。  ぴよぴよぴよぴよぴよ♪  ヒヨコが鳴いた。  思わずギクリと足が止まる。  な、なに?  ヒヨコ?  耳を澄まして、辺りの気配を探る。
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