『夏目 雛小』

11/16
前へ
/19ページ
次へ
 ぴよぴよぴよぴよぴよ♪  再び鳴いた。  …………?  鳴いたっていうか……鳴った?  微妙に電子音の感じがする。  もしかしてこれ…………。  ぴよぴよぴよぴよぴよ。 「ん……うん……? うー……」  ベッドの上の夏目が動く気配。  探るような衣擦れの音がして、  ぴよぴよぴッ。 「…………もしもし?」 『あっ、もしもし!? ひな!? アンタ今どこにいるのッ!』 「へ?」 『だから! アンタ今どこにいんのよ!』  わぁお。  会話筒抜けでっせ。 「ど、どこって──あ、保健室みたい」  回りを見て察したのかそう答える夏目。  おぅ。  もしかしなくても運ばれた記憶、ない?  …………ってことは。 「あ、待って、誰かいる──」  !?    シャッ 「ひゃあ!?」  俺の姿を認めて、彼女は短く悲鳴を上げる。 「…………………」  まぁ、そうなるわなー。  俺は黙って視線をあらぬ方向へ向けるしかなかった。 「だ、だれ」 「キミを運んだヤツだよ」  そう言うしかなかろうて。 「あっ、そうだ……アタシ、階段で…………」  お。  一応、思い出してくれたか。 「あなたが助けてくれたの?」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加