『夏目 雛小』

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「助けたっていうか、運んだだけだよ」 「そ……なん、だ……。ありがとう」 「…………電話、途中みたいだけど、いいの?」 「え? あっ…………」  夏目が慌ててスマホを耳にあてる。  が。 「切れちゃった…………」  困り顔でスマホを見つめる夏目。 「まぁ、また掛かってくるんじゃないか?」 「その前に来ちゃうかも」  ん?  来ちゃう? 「えっと、どうしよ、逃げた方が……」  逃げる?  …………俺、この子がなにをいっているのかわからないんだけど。 「逃げるって何から」  と、俺が夏目に説明を求めようとしたとき、遠くからバタバタと荒い足音が聞こえてきて──  バンッ!  勢いよく保健室の引き戸が開けられ、一人の女子生徒か飛び込んできた。 「ひなッ!」  その女子生徒は夏目に目掛けて駆け寄ってきた。  そしてそのまま彼女の肩をつかんで詰め寄る。 「さっきの悲鳴なに!? 何があったの!? もしかしてコイツ!? コイツがなにかしたんだね!」  女子生徒は俺を睨んだ。  え? 「ろくちゃん、ちょっと落ち着いて……ッ」 「油断しちゃダメだよ、ひなッ。こんなヤツ、私がなんとかするから!」
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