『夏目 雛小』

13/16
前へ
/19ページ
次へ
 んん?  なん とかするって…………なに?  俺が疑問に思ってハテナを頭上に浮かべていると、夏目の友人らしい“ろくちゃん”は夏目から離れて俺に向き直り、構えた。  ひょっとしてこれは…………。 「せっ!」  短い気合いと共に繰り出されたのは正拳突き。 「おぅっ」  反射的に俺は避けた。  これは明らかな敵意ですな!  って、逃げるって、このことか! 「ちょっ、ろくちゃん、止めてよ」  夏目が“ろくちゃん”にしがみつくように止めに入った。 「なんで止めるの!? ひな、コイツになんかされたんでしょ!?」 「さっ、されてないされてない! むしろ助けてもらったの!」  夏目がそう叫ぶと、“ろくちゃん”の動きが止まった。 「…………え」 「彼がアタシをここまで運んでくれたらしいの」  夏目が言いながらこちらに視線を寄越すと“ろくちゃん”もこちらを見たので、俺は頷きを返した。 「じゃあ、さっきの悲鳴は?」 「あ……うん、アタシさっき起きたばかりで……カーテン開けたらすぐ傍に彼がいたからびっくりしちゃって」 「そ、そうだったの…………」 「……………………」 「……………………」  沈黙。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加