『夏目 雛小』

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 …………ふむ、これぞ、気まずい空気。  俺、こういう空気苦手なんだよなー。  無意味な言葉で無為に壊したくなる。 「おいおいおい、ドアは開けたら閉めてくれよなー」  そんな先生の言葉で気まずい空気が壊れた。  開け放されたままの入り口に、いつのまにか先生が立っていた。  先越された…………。 「蜂ヶ谷、お前だろ」  ドアを後ろ手に閉めながら先生が言う。 「だったらなんなの」 「開き直るな、ドアかお前は。次から気を付けろ」 「覚えてたらね」 「かわいくねぇなぁ」  ………………………。  なんか、馴れ合いを感じるやりとりだな。 「あ、君、留守番ありがと。夏目さんの親御さんが迎えに来ることになったから帰っても大丈夫だよ」  先生はデスクに就きながら、手に持っていた書類に目を通し始めた。 「わかりました。それじゃ──あ」  帰りかけて、思い出した。 「夏目」 「ん?」 「それ、さ」  俺はポシェットを指し示した。 「賞味期限が迫ったヤツってどうしてんの?」  あれだけの量だ。  一人では消費出来まい。 「あ……えと、ろくちゃんと一緒に放課後に食べてるけど…………」  
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