『夏目 雛小』

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「ふぅん、そんな噂があるんだ」  俺は曖昧に頷いた。 「でもこの噂、本当なのかどうか分からないんだよ」 「いや、だからこその噂なんじゃないのか?」  ~らしいよ、とか、~みたいよ、とか、そんな不確定な言葉尻はそうだろう。  あれ? こいつ、そういうの分かってるヤツだったけどな。  どうした? 「そこでだ」  実が一層真剣な顔で言う。 「オレ、彼女をストーキングしてみようと思う 」 「いきなりの犯罪敢行宣言はやめてくれないか」  何言ってんだコイツ。 「オレ、尾行には自信があるんだよね」 「そういう問題じゃないことに気付け」  え? なに? コイツ、バカだったの?  中学からの付き合いだけれど、それなりにコイツのことを知ってるつもりだったのに、俺の中のコイツに対する認識がひっくり返りそうなんだが? 「因みにだけど。その、彼女の噂、確かめてどうするんだ?」  実のことだから、何が目的があるはず。 「オレがお菓子を食べたくなった時、もらいに行く」  ふん、と鼻息一つ噴きドヤ顔で宣う実。 「はい、お前バカ決定」 「なんで!?」  呆れて言った俺に、ぎゃあぎゃあとうるさく言い返す実。  今後、同じ事を話してくるようなら 全力で阻止しようと俺は決意した。
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