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「夏目さん、ちょっと身体を起こすよ」
言って先生が彼女の身体をゆっくりと支え起こす。彼女は「ん……」と小さく呻いて少し目を開けた。
「これ、少しずつでいいから飲んで」
先生がコップを手にして、それを彼女の口に近付ける。最初は唇を濡らす程度から始め、次第に彼女が求めるような反応を示すと、先生はコップを彼女に渡した。コップはすぐに空になり、その縁から口を離した彼女はふぅ、と息を吐く。
「しばらく寝ていなさい。ポシェットは先生が預かっておくから」
「はい……」
おずおずと夏目はポシェットを先生に渡し、それからベッドに身体を沈めて、すぐに寝息を立て始めた。
「…………彼女、熱中症だったんですか?」
彼女を起こさないように小声で先生に訊く。
「ん? あぁ、いや、違うよ」
先生も声量を抑えて応じる。
「え、でもこれ、熱中症の時とかに飲むヤツですよね」
俺は経口補水液を見た。
「それ、熱中症以外にも使えるんだよ。夏目さんの──低血糖症状にもね」
低血糖……症状?
「彼女、病気なんですか?」
「病気というか、その一歩手前というか、うーん、なんというか、まぁ、そういう体質なんだよ」
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