『夏目 雛小』

7/16
前へ
/19ページ
次へ
「夏目さん、ちょっと身体を起こすよ」  言って先生が彼女の身体をゆっくりと支え起こす。彼女は「ん……」と小さく呻いて少し目を開けた。 「これ、少しずつでいいから飲んで」 先生がコップを手にして、それを彼女の口に近付ける。最初は唇を濡らす程度から始め、次第に彼女が求めるような反応を示すと、先生はコップを彼女に渡した。コップはすぐに空になり、その縁から口を離した彼女はふぅ、と息を吐く。 「しばらく寝ていなさい。ポシェットは先生が預かっておくから」 「はい……」  おずおずと夏目はポシェットを先生に渡し、それからベッドに身体を沈めて、すぐに寝息を立て始めた。 「…………彼女、熱中症だったんですか?」  彼女を起こさないように小声で先生に訊く。 「ん? あぁ、いや、違うよ」  先生も声量を抑えて応じる。 「え、でもこれ、熱中症の時とかに飲むヤツですよね」  俺は経口補水液を見た。 「それ、熱中症以外にも使えるんだよ。夏目さんの──低血糖症状にもね」  低血糖……症状? 「彼女、病気なんですか?」 「病気というか、その一歩手前というか、うーん、なんというか、まぁ、そういう体質なんだよ」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加