『夏目 雛小』

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 低血糖を起こしやすい体質っていうのかな──そう言いながら、先生は夏目のポシェットを開ける。 「え、ちょっ──」  俺が止めるのも間に合わず、先生はポシェットの中身をベッドの上にぶちまけた。 真っ白なシーツの上に散らばったのは──大量のお菓子。棒付きキャンディ、スティックキャンディ、コアラの○ーチ、チョコプレッツェル、さくさくパ○ダ、ポケットオレ○…………その他。  ジャンル見境なく甘いものがそこに現れる。  …………噂は本当だったのか…………。  それにしても、チョコプレッツェルとさくさくパ○ダはこの季節、持ち歩くには厳しくないか?  夏だぞ? 「一応、言いつけは守ってたか」  ふむ、と頷いて菓子を眺める先生。 「?」  言いつけ? 「甘いものを携帯しとけって言ってあったんだよ」  俺から疑問の気配を察したのか、先生はそう言った。 「そうだったんだ…………」  だからポシェットを持ち歩いて──  ん?  待てよ?  じゃあなんで低血糖起こしたんだ?  手元に甘いものがあったのに。 「あぁ──これか」  お菓子を眺めて(検品して)いた先生が声を上げた。  見ると一つのお菓子を手にしている。
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