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「がっついて食ったんだろ~? 口の周りに付いてたぞ?」
「ぇえ? さっきはたいたのに……」
ロイドは顔を赤くして、自分でも口の周りに触れて恥ずかしそうに俯いた。
「ロイドはこう見えて大食いだからな」
「だなぁ」
「…………」
ユーリが舵を緩く微調整しながら言うと、リグは優しく笑ってふてくされるロイドの頭を撫で、立ち上がった。
ロゼルも彼の隣で、笑顔でロイドに言う。
「育ち盛りだものね。良いことだわ」
「確かに」
うんうんと頷くリグに、ユーリが怪訝な表情を浮かべる。
「それはいいから、早く舵を取れ」
「あぁ、悪ぃ。サンキューな」
舵を放り投げていたことを思い出したリグは頭を掻いて、再度舵を握った。
しっかりと舵を握り直したリグは、隣にいるユーリに笑顔で話し掛ける。それを見上げている、小さいロイド。
ロゼルはそんな三人を順番に見て、一人小さく笑った。
◯
クレンゼルが見えてきたのは、それから五日ほど経った頃だった。
クレンゼルは、代々エルワルツ公家の公主が治める小さい島国だ。質素だが明るく穏やかな文化を築いている。
舵を取るリグは、クレンゼルの領土が見えてきたのを確認して、大声で甲板にいるユーリに言った。
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