第1章

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「がっついて食ったんだろ~? 口の周りに付いてたぞ?」 「ぇえ? さっきはたいたのに……」 ロイドは顔を赤くして、自分でも口の周りに触れて恥ずかしそうに俯いた。 「ロイドはこう見えて大食いだからな」 「だなぁ」 「…………」 ユーリが舵を緩く微調整しながら言うと、リグは優しく笑ってふてくされるロイドの頭を撫で、立ち上がった。 ロゼルも彼の隣で、笑顔でロイドに言う。 「育ち盛りだものね。良いことだわ」 「確かに」 うんうんと頷くリグに、ユーリが怪訝な表情を浮かべる。 「それはいいから、早く舵を取れ」 「あぁ、悪ぃ。サンキューな」 舵を放り投げていたことを思い出したリグは頭を掻いて、再度舵を握った。 しっかりと舵を握り直したリグは、隣にいるユーリに笑顔で話し掛ける。それを見上げている、小さいロイド。 ロゼルはそんな三人を順番に見て、一人小さく笑った。 ◯ クレンゼルが見えてきたのは、それから五日ほど経った頃だった。 クレンゼルは、代々エルワルツ公家の公主が治める小さい島国だ。質素だが明るく穏やかな文化を築いている。 舵を取るリグは、クレンゼルの領土が見えてきたのを確認して、大声で甲板にいるユーリに言った。
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