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「ユーリ~! そろそろ変わってくんねぇ?」
声が届いた途端、ユーリは仏頂面でリグを振り返り、重い足取りでブリッジに向かう。
「……たまには自分で入ってみろ」
「ヤダよ。ぜってぇどっかしら引っ掛ける」
「……ったく」
言いながらも、ユーリはブリッジに上がり、リグと舵取りを交代する。
「クレンゼルの港は狭いからね。ユーリ、いつもありがとう」
と、先ほどのやりとりを聞いていたのか、ブリッジ下から現れたロゼルはユーリを見上げながらそう言った。
彼女は普段と違って、シンプルなシャツにベストを羽織り、ズボン、ブーツと、まるで男装しているかの様な姿をしている。
「別に良い。いつものことだ」
ユーリは愛想なくそう答えて、少しずつ近付いてくるクレンゼルに目をやる。
それほど大きな島ではない。
「ユーリの操船は水夫一だからなぁ」
「うっせぇ」
リグの言葉にユーリは適当にそう言って、舵を微調整させながら空を仰いで一呼吸した。
クレンゼルの港は、国の規模と比較しても小さめの港だ。近付くにつれて、色とりどりの旗で飾り付けられた港の様子がはっきりと見えてくる。
「わぁ! 綺麗だね!」
「ええ。相変わらず明るいところね」
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