第1章

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日の光を浴びた旗は、路地にその色を映し出し、その上を子どもたちが元気よく跳ねて行く。 そんな微笑ましい光景を笑顔で眺めながら、ロゼルは頭の中に思い描いている目的地へ向かう。 だが、ふと胸騒ぎのような嫌な感覚を覚え、何気なく辺りを見渡した。 可愛らしい外壁をした家々の前で、子供達がぴょんぴょんと楽しそうに遊んでいる。 その、わずかな隙間。 狭い路地の闇から、悪寒がする。 「あれ? どこ行くの?」 「ふふ、ゴメンね。ちょっと近道よ」 声を掛けてきた子供達に笑顔で返して、ロゼルは路地に体を滑り込ませた。 華やかな雰囲気から一転、カビ臭い空間を進んで行き、悪寒の源泉を探る。 自分の感覚だけを信じて足を進めて行く。と、微かに声が聞こえてきて、ロゼルは確信した。 ビンゴ。 「お一人でお出掛けとは、無謀にもほどがあるのでは?」 「貴女のお命を狙うものがこの国にはたくさんいるのですよ?」 物騒な言葉。聞こえて来る声を頼りに、悪人が何人いるか推測する。恐らく、最低三人はいる。 「こんな好機は滅多にありませんからね。せっかくですから、ここで死んでいただきましょうか」 ブワッと殺気を感じ、ロゼルは咄嗟に飛び出した。 右腰に提げた剣を鞘のまま抜き、振り下ろされた棒状の武器を受け止める。
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