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その言葉にエリンシアはふるふると首を振って、一瞬弱々しい表情を見せてから、自分よりも長身のロゼルを見上げて応えた。
「民の一部に慕われているだけではダメなんです。全ての民に納得してもらえるような国作りをしなければいけません」
「…………」
「私は、父を見てそれを強く実感しましたから」
エリンシアの語気はとても強かった。
ロゼルは、そう、と小さく返して、それ以上は何も言わなかった。
しばらく無言のまま歩き続け、気付くと目の前はもうクレンゼル港であった。
街中の優しく賑やかな雰囲気とは異なり、うるさくガヤガヤした喧騒が耳に届く。
ロゼルはそんな雰囲気に物怖じせず、さっさと自分の船に向かって歩き出す。
エリンシアは少し躊躇ってから、彼女の背後にぴったりくっつくようにしてついていった。
どこを見渡しても、ガタイの良い日焼けした大柄の男ばかりだ。
その中を女性二人が歩くと嫌でも目立つ。
そんなことを全く気にせず、ロゼルは自分の船の前に立ち、ボラードを確認する。
そして、怪訝そうな顔をして背後を振り返った。
振り返ると、心配そうな顔をしたエリンシアが視界に入る。
「あ、あの……どうかしましたか?」
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