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ロゼルは咄嗟に嘘をついたが、何の事情も知らない男は特に気にせず、彼女を頭の上からつま先まで眺めてから鼻で笑った。
「はん、女の船乗りか。どうりで頭がおかしいわけだ」
「……は?」
「ロークなんかとよく一緒にいられるな。俺だったら恥ずかしくて無理だね」
男はそう言って大口を開けて笑った。
リグはそれを見て表情を暗くし、ユーリは呆れたように腕を組んでため息をついた。
「……女だから、ロークだから。そんな自分の物差しだけで判断する輩は信用ならねぇな。俺だったら、恥ずかしくてそんなことできねぇ」
「ぁあ? てめぇ、喧嘩売ってんのか?」
大声で笑っていた男は一旦口を閉じてから顔を歪め、彼を睨んだ。
睨まれてもユーリは怯まず、表情一つ変えず、ただ淡々と事実を述べる。
「てめぇが先に喧嘩売ったんだろうが。それすらも覚えてねぇのか?」
「んだと、おい、コラァ!」
ガッと胸倉を掴まれるが、ユーリはまったく動じず、男を見下ろすようにしてから自分のシャツを掴んでいる男の手首を掴んだ。
そして表情を変えないまま、その邪魔な手首を捻り上げた。
それほど力を入れたわけではないが、男は悲鳴を上げ、反射的に逆の手でユーリの頬を殴った。
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