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ユーリは殴られた頬を気にする素振りは見せず、掴まれたシャツの皺を伸ばしてから肩を落とした。
周りにはいつの間にか大勢の野次馬が集まっており、人間の壁が出来上がっている。
もともと少し離れたところからロゼルたちの様子を伺っていたエリンシアは、人の波に揉まれてだいぶ後ろに移動してしまい、彼らの様子が見えなくなってしまっていた。
ロゼルはユーリが殴られた拍子に思わず口に手を当てた状態のまま、赤くなってしまっているユーリの頬を見上げる。
「だ、大丈夫?」
「ん? 腫れてるか?」
「赤くなってる……」
ロゼルの言葉にユーリはようやく殴られた所に興味を示して、自分の頬に触れた。
だが、やはりあまり気にしていないようだ。
そんな彼の代わりと言ったように、ロゼルが男に向かって語気を強めて言った。
「ちょっとあんた、いくらなんでも暴力はないんじゃないの?」
「あ? うっせぇな。とにかく金払えよ! じゃなきゃ、俺のボラードは使わせねぇよ!」
「……わかった。金なら払う。てめぇがそう言うなら仕方ねぇ」
ユーリがそう言うと、男は満足したように笑みを浮かべたが、彼の言葉はそこで終わりではなかった。
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