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「けどな、一つ覚えておけ。俺を侮辱することは構わねぇ。でも、他のロークやロゼルを差別するやつは絶対に許さねぇ」
「?」
男はユーリの言葉が理解できなかったのか、怪訝そうな顔をして、ユーリを小馬鹿にしたように首を傾げた。
一方、視界を完全に阻まれてしまったエリンシアは困惑した表情をそのままに、ふと足元に目をやった。
ひらりと爪先に流れてきた紙切れを見て、それを拾い上げる。
ボラードを所持している男だけが持つ印、その持ち主の名前、そして金額が書かれている。
エリンシアはしばらくそれを見下ろしていたが、突如キッと鋭い目をして顔を上げ、大男たちを押し退ける様にしてロゼルの元へ向かった。
ユーリと対峙している男は首を傾げた姿勢のままユーリとリグを見上げ、口をいやらしく歪めてから周りの野次馬たちに聞こえるように響き渡る大声で言った。
「差別されて当然だから俺たちは差別してるんだぜ? なあ? ロークなんて劣等種じゃねぇか。脳みそ入ってんのかわかんねぇほど馬鹿なんだってなぁ?」
その言葉に野次馬たちは盛り上がる。
リグは唇を噛むようにして俯いたが、その視線の先にユーリの硬く握られた左の拳が見えて、咄嗟に彼の腕を掴んだ。
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