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「ユーリ、落ち着け!」
途端、リグは前方にものすごい力で引っ張られ、危うく転びそうになる。
それをぐっと堪えて、ユーリの腕を自分の方に引き寄せようとする。
「ダメだって! 前にも言っただろ?」
「……ちっ」
ユーリの拳は、リグのおかげで男の鼻の直前で止まった。
しかし、その拳圧に怖気付いたのか、男は腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。
しん、と野次馬たちも静まり返る。
リグによって牽制されたユーリは握り締めていた拳を解いてため息をつき、姿勢を戻してから唖然として自分を見上げている男に言い放った。
「もう一度言うぞ。俺を侮辱するのは構わねぇ。ただし、他のロークやロゼルを馬鹿にするやつは許さねぇ」
「ユーリ……」
「それとな、俺みたいに気性の荒い変わりモンのロークがいるってことをよく覚えておけ。ロークなら大人しいって考えは持たねぇことだな」
その言葉に男は素直に何度も頷いた。
静まり返った野次馬たちは、少しずつその場を離れ、逃げるように去っていってしまった。
「うわわ、なにごとですか? あ、ロゼル! よかった、やっと抜け出せました!」
「エリー……。あら? ごめん。あんた、どこにいたの?」
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